今も残る看板建築とは

今も残る看板建築とは

看板建築(かんばんけんちく)は、主に日本の昭和初期に登場した独特の建築様式を指します。
建物の正面(ファサード)の部分を銅板やモルタル、タイル等の火に燃えにくい素材で装飾した造りの建物で、建物自体はまるで1枚の看板のように平らに立ち上がったデザインであることから、看板建築と呼ばれるようになりました。
このスタイルの建築物は、商店や住居として使われる建物の外観に装飾的な看板や意匠が取り入れられています。
元々は都市部で商業目的に建てられた建物が多く、現在でも一部の地域でその姿を見ることができます。
看板建築は、経済発展や近代化の過程で生まれた日本独自の建築文化の一つです。

1. 看板建築の歴史と背景

看板建築は、主に1920年代から1930年代(大正末期から昭和初期)にかけて普及しました。
この時期、日本は都市化が進み、商業活動が活発化しました。
以下は看板建築が登場した背景です。

1-1. 大正デモクラシーと都市化

・大正時代から昭和初期にかけて、日本の都市部では中産階級が増加し、商店や店舗の数が増加しました
店舗が密集する都市部では、他店との差別化を図るため、外観デザインに力を入れる必要がありました

1-2. 関東大震災の影響

・1923年の関東大震災により、多くの木造家屋が失われ、耐火性や安全性を考慮した新しい建築が求められました
鉄筋コンクリートやモルタルといった近代的な建材を使用することで、より装飾的な外観を実現しました

1-3. 欧米の建築デザインの影響

・当時、日本は欧米文化の影響を強く受けており、アール・デコやアール・ヌーヴォーといったヨーロッパの装飾様式が取り入れられました
・これにより、看板建築にはモダンなデザインが採用されるようになりました

2. 看板建築の特徴

看板建築には、以下のような独特の特徴があります。

2-1. 外観が「看板」の役割を果たす

建物の正面部分は装飾的な壁やファサードで覆われており、まるで看板のようにデザインされています
・店名や業種を大きく表示し、通行人に視認されやすいよう工夫されています

2-2. 装飾性

・モルタルやタイルを使った豪華な装飾が施されています
・彫刻的なデザインや幾何学模様、植物モチーフが多く見られます
欧米の建築様式を取り入れたアール・デコ風の意匠もよく使われました

2-3. 表と裏のギャップ

建物の正面(表側)は非常に華やかで装飾的ですが、裏側は一般的な木造家屋の構造であることが多いです
・これはコスト削減のためで、装飾的な外観を重視する一方で、住居部分は簡素に仕上げられていました

2-4. 店舗兼住宅

・看板建築の多くは「店舗兼住宅」として設計されており、1階部分が商店、2階以上が住居として利用されました
・この構造は、都市部で限られた土地を有効活用する方法として適していました

3. 看板建築の建材と技術

看板建築では、以下のような建材や建築技術が使われました。

3-1. モルタル

・建物の外壁にはモルタル(セメントと砂を混ぜたもの)がよく使われました
モルタルは柔軟性があり、自由な形状を作りやすいため、装飾的な意匠に適していました

3-2. タイル

・小さなタイルを用いた装飾が多く見られます。タイルは耐久性があり、色彩豊かなデザインを可能にしました
・特に、カラフルなモザイクタイルや幾何学模様が人気でした

3-3. 鉄筋コンクリート

一部の看板建築では鉄筋コンクリートが使用され、耐火性が向上しました
・この技術は特に大都市で普及し、近代建築の一部として受け入れられました

4. 看板建築の現代における価値

看板建築は、単なる商業建築としてだけでなく、文化的・歴史的な価値も持っています。

4-1. レトロ建築としての魅力

・看板建築は、昭和初期のレトロな雰囲気を感じさせる貴重な建築物です
・近年では、これらの建築をリノベーションしてカフェやギャラリーとして利用するケースも増えています

4-2. 歴史的価値

・看板建築は、当時の都市化や近代化の象徴とされ、日本の建築史や文化を語るうえで重要な存在です
一部の建物は地域の文化財として保存されています

4-3. 観光資源としての活用

・看板建築が多く残るエリア(例:東京・谷中、川越など)は、観光地として注目されています
・昭和の風情を感じられる場所として、国内外の観光客に人気があります

5. 看板建築の現状と課題

5-1. 保存の難しさ

看板建築の多くは築年数が長く、老朽化が進んでいます。保存や修復には多くの費用がかかります
現代の建築基準法に適合していない場合が多く、改修が必要です

5-2. 再利用の可能性

看板建築を活かしたリノベーションや再利用が注目されています
・例えば、古い商店をカフェやアトリエに改装するなど、新たな価値を生む取り組みが行われています

5-3. 地域の取り組み

・地域住民や自治体が協力し、看板建築の保存活動を行う事例も増えています
・地域の景観を守り、観光資源として活用するための努力が求められています

まとめ

看板建築は、昭和初期の都市化と商業活動の発展を象徴する建築様式であり、装飾性と実用性を兼ね備えた独特のスタイルが特徴です。
現代では、文化的・観光的な価値が見直されており、保存や再利用の取り組みが進められています。
一方で、老朽化や法的な課題も存在するため、今後の保全と活用が重要なテーマとなっています。

看板建築の魅力を活かしつつ、新たな用途や地域の活性化に役立てる取り組みが求められています。
興味がある方は、ぜひ一度実物を訪れてその魅力を体感してみてください!

 

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